介護離職による失業保険の受給条件と手続き

近年、介護を理由に離職する方が増えており、その際に重要なポイントの一つが「介護と失業保険」の制度です。介護を必要とする家族を抱えることは、心の負担だけでなく、経済面でも大きな影響を及ぼします。介護離職を経験した方や、その可能性を考えている方にとって、失業保険の受給に関する基本的な知識は欠かせません。
まずは、介護を理由に退職した場合の失業保険がどのように適用されるのか、特定理由離職者として認められる条件や受給期間について考慮してみましょう。介護が必要な家族を支える一方で、自身の生活も守るために、情報をしっかり掴んでおくことが大切になります。
介護離職をした場合の失業保険の基礎知識

介護の理由で離職を選んだ場合、失業保険に関する基礎知識は不可欠です。特に、退職理由や資格を整理し、給付日数や受給手続きの流れを把握することが大切です。
介護を理由に退職したら失業保険は?
さらに、介護を理由に退職した場合、特定理由離職者として認定されるかどうかが重要になります。もし、認められない場合は「自己都合の理由による退職」になりますので、受給開始時期が延びたり、受給期間が少なくなります。
自己都合退職の場合の受給要件
- 加入期間: 離職の日以前の2年間で通算12か月以上
- 受給開始: 7日間の待機期間のあと3か月経過後
- 受給期間: 90日~150日(雇用保険の加入期間による)
特定理由離職者の場合の受給要件
- 加入期間: 離職日以前1年間に通算6ヵ月以上
- 受給開始: 7日間の待機期間のすぐ
- 受給期間: 90日~330日(雇用保険の加入期間や年齢による)
特定理由離職者の判断基準
期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)
さらに家族の介護などが理由の場合は、
父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
この中で、扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とするとあり、この判断基準はあいまいではありますが、少なくとも、そのことが証明されることが条件となります。
特定理由離職者として認められる具体的な条件
「親の介護が必要」などの理由で特定理由離職者として認められるためには、いくつかの条件がありますが、具体的にはどのような場合に認められるのでしょうか。
- 親と二人暮らしで、その親が足を骨折をして自分で歩けなくなった
- 遠方に住んでいる親に介護が必要になり、現在の仕事を離職さざるを得ない
- 認知症の影響で徘徊などの症状があり、一人にできない
上記のような理由があれば、特定理由離職者として認められる場合はありますが、いずれにしても、診断書や介護認定書などの証明できる書類が必要となります。
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介護離職をした際の失業保険の受給手続き

退職後の失業保険申請の流れとは
失業保険を申請するためには、いくつかの重要な書類が必要です。主な書類には、退職証明書、介護に関する証明書、特定理由離職者としての申請書などがあります。特に介護に関する証明書は、医療機関や福祉事業者からの取得が必要な場合がありますので、早めの行動が望ましいです。
また、書類の不備があった場合、受給の遅延につながることがあるため、必要な情報が正確に記載されているかを事前に確認しておくと安心です。
特定理由離職者としての診断書の入手方法
特定理由離職者として認定されるためには、介護の必要性を証明する診断書が必要です。この診断書は、主治医などから取得しますが、診察を受けた上で介護が必要であると判断された場合は、診断書の発行がされます。
また、介護の状況やその程度、今後の治療方針について詳しく記されることが求められます。また、診断書の取得には日時がかかることもあるため、早めに相談しておくと良いでしょう。
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失業保険受給中の心配事と他の制度について

失業保険を受給中には、さまざまな心配事が出てくることがあります。特に、介護との両立や他の制度との関係を理解することが重要です。
失業保険を受けながらの介護との両立
失業保険を受給しながら介護を行う場合、両立させるための工夫が必要ですが、具体的には、日々の介護の合間を見つけて転職活動を行うことが大切です。また、失業保険受給中でも、介護をしながら新しい職にチャレンジすることが可能であり、ハローワークの情報なども多いに活用しましょう。
また、ケアマネージャーに相談しながら、介護サービスを利用することで、少しでも自分の負担を軽減し、転職に集中できる時間を増やすことができるはずです。
失業保険受給中の健康保険について知っておくべきこと
失業保険を受給中は、健康保険の取り扱いにも注意が必要であり、通常は失業すると会社の健康保険から外れ、自分で国民健康保険に切り替える必要があります。なお、会社勤で全国健康保険協会などに加入していた場合は、「任意継続」を選択することが可能です。
任意継続被保険者制度の概要
- 加入要件:資格喪失の日の前日まで継続して2か月以上被保険者であったこと
- 継続期間:任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したときまで

健康保険の任意継続は、国民健康保険より保険料が安くなる場合がありますので、ぜひチェックしておいてください。
介護をしながら転職を考える際のサポート制度
介護をしながら転職を考える方には、さまざまなサポート制度が存在し、例えば、地域によっては介護をしながら福祉サービスの利用をサポートする制度があります。また、介護離職をした場合に特化した就職フェアや、相談会も開催されています。
こうした制度を利用することで、転職に向けた情報収集やネットワーク作りを進めることができ、次のステップに向けた大きな助けになるでしょう。
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まとめ
近年、介護を理由に離職をする人が、1年間で10万人に達していると言われています。その一方、経済的なことや家族との関係で悩んでいる人のケアは、まだまだ「個人それぞれで対応することが多い」のが現状ではないでしょうか。
もし、家族の介護が必要になったとき、失業保険や地域の支援などの制度を理解して、少しでも介護の負担が軽減されることが、その後の日常生活にはかかせないでしょう。